ラブエンゲージと甘い嘘
「そのハンカチ……」

「え? これですか、これは……あっ。私このあたりで降ろしてください」

男の話の真意が気になったが、柚葉との待ち合わせのカフェの近くにタクシーがきていた。すぐにタクシーが速度を緩めて路肩に止まる。

お財布からお金を取り出そうとすると、男がそれを止めた。

「無理矢理タクシーに乗ったのは俺だから、ここはいい」

「でも……」

「いいって言ってるんだ。運転手さん出してください」

そう告げると、戸惑う私を残したままタクシーは走り去ってしまった。

ちょっと強引だけど、私が思っているよりも普通の人なのかもしれない。そんなことを思いながら腕時計を確認すると、待ち合わせの時間を十分ほど過ぎていた。

「もうこんな時間! 急がなきゃ」

私はヒールの音を響かせて、柚葉との待ち合わせ場所へと急いだのだった。
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