ラブエンゲージと甘い嘘

「もう、あれほど遅刻しないでって言ったのに」

「ごめん、ごめんって。こんど明治屋(めいじや)のランチおごるから許して」

顔の前で両手を合わせて、柚葉に許しを請う。

「絶対だよ。食後にプリンも食べていい?」

「いいよ。いい。だからもうそろそろ機嫌なおしてよ、ねっ?」

急いだものの、カフェに到着したときにはすでに、待ち合わせの時間を十五分ほど過ぎていた。そこから今日の本来の目的地であるこの場所に移動してくる間も柚葉はずっと機嫌が悪いままだ。

「かっこいい人が他の女の子に取られてたら、どうするの!?」

「そんな……まだ始まったばかりだから大丈夫だって」

「つむぎはもっと危機感もたないと。せっかくこのプラチナチケット手に入れたんだから有効活用しない手はないでしょ!」

柚葉の言う“プラチナチケット”とは、とあるお見合いパーティのチケットだ。

私が「たかがお見合いパーティ」と言うとすごい勢いでまくしたてられた。

「本当につむぎは何もわかってないんだからっ!この【グレース】のお見合いパーティに参加するのは並大抵のことじゃないんだからね。私も伝手をたどってやっとチケットを手に入れたのに。なんでそんなに気合が入ってないのよ」

柚葉の言うグレースと言うのはこの二・三年でいきなり業界トップに躍り出た結婚紹介所だ。その名のとおり会員はエグゼクティブな人のみで、その入会基準たるやかなり厳しい。
< 11 / 19 >

この作品をシェア

pagetop