ラブエンゲージと甘い嘘
ん……騙される?

『俺みたいに女を食いモンにして生きている悪い男が世の中にいるってわけだ』

急にタクシーの中で、あの男が言っていた言葉がリフレインされる。
降りることを優先して、その言葉の意味を聞かなかった。しかし今考えてみると良からぬことしか思い浮かばない。

『女を食いモンにして生きる……』

それと今しがた頭に浮かんだ『騙される』という言葉が強く結びつく。

もしかして……結婚詐欺師!?

以前テレビでやっていた、警察の特集にでてきていた詐欺師を思い出す。たしか結婚詐欺は“赤詐欺”って言うんだっけ……。いや、今はそれどうでもいいや。

あせっているせいで、どうでもいいことばかり思い出す。

最近の詐欺師はそれとはわからないような人が多いと言う。身なりもきちんとした人が多いと聞くし、人の好いふりをしてターゲットに近づくと言う。

それに、あの男が最初に見せた紳士的な態度と、その後に見せたぞんざいな態度が、詐欺師の見せる表と裏の顔のように思えてきた。

ここに集まる女性たちは、私のような庶民もいるけれど、そうでない人の方が圧倒的に多いはずだ。

結婚詐欺師にとっては、こんなに便利な狩猟場はない。

これって……大変なことなんじゃないの?

純粋に相手を見つけようとしている人を陥れるなんて、絶対にダメだ。

それでもし相手の女の子が結婚に夢を持てなくなってしまったら……そう思うと私の正義感がむくむくと大きくなる。

細かいことを考える前に、体が動きだしていた。

「あれ、つむぎ。どこ行くの?」

柚葉の声が聞こえたが、私はそれに返事もせずに、一目散にその男の元へと向かって行った。
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