俺様紳士の恋愛レッスン
優愛さんが診察室に入ってから、既に1時間以上が経っている。



「旦那さん、連絡取れた?」

「あぁ」

「そっか。早く来れるといいね!」



蛍光灯が煩い割に、一つも音がしないせいで、取り繕った明るい声はフロア全体に響いてしまう。

けれど十夜はやはり、「あぁ」しか言わない。

その視線はずっと変わらず、無機質な床の一点に注がれている。



「エン、お前はもう帰れ」

「え?」

「ここまで付き合わせて悪かった。もう、いいから」



一瞬ムッとなりかけたけれど、彼は恐らく「ありがとう、もう大丈夫だから」と言いたいのだろう。

けれど余りにも無表情で、且つ視線も合わせずに言うものだから、



「やだ! 私も残る!」



そう、返してしまった。


私は完全なる部外者であり、ここは言われた通りに大人しく帰ることが、気の利く女の選択なのだと思う。

分かっていても、やはり蚊帳の外扱いされることが嫌だった。

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