俺様紳士の恋愛レッスン
今、この場で、新たに誕生した愛情の証。

その美しさに、言葉を失った。


おめでとうございますと、声を掛けるべきだった。

けれど言葉は喉で詰まり、苦い熱となって消えた。



――十夜は今、どんな気持ちで、この光景を眺めているのだろう。

想像して、じわりと目頭が熱くなる。


何も言わず、動かず、視界の端にぼんやりと浮かぶチャコールグレー。

私は恐くて、その表情を窺うことができなかった。


美しい世界から切り離されたこちら側は、一体、どんな顔をすればいいのだろう。



「エン、行くぞ」



十夜は椅子から立ち上がり、医師に一礼すると、扉へと向かう。

そして優愛さんの頭をぽん、と撫でて、躊躇うことなく部屋を出た。



「ちょっ、十夜!」



私は幸せな二人の視線から逃れるように一礼し、慌てて彼の背中を追った。

< 118 / 467 >

この作品をシェア

pagetop