俺様紳士の恋愛レッスン
「エンちゃん! おかえり」

「……タカ、ちゃん?」



私を出迎えたのは、目に痛い蛍光灯の明かりと、愛嬌のある笑顔。

いつもと同じ、日常の1ピース。



「……なんで」



ただ一つ違うのは、目の前に立つタカちゃんの姿。



「あ、これ? 一応見た目くらいはちゃんとしとこうかなって思ったんだけど。やっぱ恥ずかしいね」



ボサボサの長い髪は短くカットされ、ゆるゆるのスウェットは漆黒のリクルートスーツに。



「エンちゃん」



私を見据えるその眼も、全部、



「大事な話があるんだ」



私の知らない、男の人。



「あはは、そんなにビックリしないで。エンちゃんと初めて会った日もこのスーツを着てたんだよ?」

「……うん、憶えてる」

「そっか、よかった」



わざわざスーツを着て来る程の気合いがあるのに、どうしてアポを取らなかったんだろうねと店長と笑い合ったことは、今でもよく憶えている。

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