俺様紳士の恋愛レッスン
「ま、睡眠だけはちゃんと取れよ」



十夜は淡白に呟くと、私の額にコツンと手の甲を当て、目を合わせることなく去っていった。

彼を失った空間には、清涼な香りの余韻が漂う。



「……なんでよ」



どうして怒らないのか。

私が『絶対』を守らず、何かを隠していることに気付いているのに。


どうしてそんなに優しいこと言うのか。

好きになるなって、言ったくせに。



「私だってこれ以上」



続く言葉を遮るように銀色の扉が視界を横切り、私を無機質な空間へと閉ざす。

それはまるで、届かない想いを象徴するかのようで。



「……好きになりたくないよ」



私を独り乗せたエレベーターには、潤んだ声が虚しく響いた。




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