俺様紳士の恋愛レッスン
迎えた運命の金曜日、終業後。

トイレの鏡に映る自分と睨み合い、仕上げにジョルジオ・アルマーニのリップを引いた。



「よしッ!」



完璧に仕上がった私へ一喝し、トイレを出て気合いの入ったヒール音を響かせる。

オフィスに戻り身支度をしていると、斜め前のデスクから萌が顔を覗かせた。



「エン、展覧会の時間大丈夫?」

「うん。あんまり余裕持って行っちゃうと心臓もたなそうで……って、あれ?」

「どした?」

「や、あ、あれ? どこやったっけ……」



いつも通りデスクの上に置いたはずの、スマホが見当たらない。



「萌、私のスマホ知らない?」

「見てないけど。鳴らそっか?」

「うん、お願い」



今日一日落ち着かなくて、日中もトイレや休憩室、給湯室などを行ったり来たりしていた。

どこかに置いてきたかなぁと記憶を辿るけれど、特に思い当たる場所はない。

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