俺様紳士の恋愛レッスン
「……どうしよう」



乾いたはずの涙が、湿気に触れて再び目尻を濡らす。


十夜に会わせる顔がない。

さっきまではあんなにも心強かった十夜の『待っててやる』が、今はこんなにも重い。


方をつけてこいと言われたのに。私も、そのつもりだったのに。

『もう一度』と言われて、揺らいでしまった。

タカちゃんが画家として成功する姿を、誰かが見届けてあげなければと思ってしまった。


私は十夜のコンサルティングを裏切って、また情に留まった。



十夜は眉間にしわを寄せて怒るだろう。

いや、ため息をついて心底呆れるかもしれない。


見たくない。

こんな情けない自分を、見せたくない。



「……帰っちゃおうかな」



何も言わずに、このまま逃げてしまおうか。

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