俺様紳士の恋愛レッスン
大きく息をついたタカちゃんに釣られて、ようやく呼吸を思い出す。


まさか、そんなことを考えていただなんて。

築き上げてきたタカちゃんの図式が大きくぶれて、堪らず俯いた私に、タカちゃんはふっと笑みをこぼした。



「けど、その考え自体が間違ってたんだよね」



穏やかでありながら、迷いの浮かぶその表情。

まるで鏡を見ているような感覚に、じわりと胸が、喉が、熱くなる。



「あの時僕がエンちゃんを引き止めていなかったら、そもそもお互いにこんなに苦しむことはなかったんだ。ごめんね、変な意地を張っちゃって」



天を仰いだタカちゃんの、喉の膨らみが静かに落ちる。



「エンちゃんの心は素直で、濁りがなくて、塗り直しの効かない水彩絵の具だから。モノクロになってしまったエンちゃんの心は、二度と同じ色には戻せない。
もう、新しいキャンバスに変えないとね」



微笑むタカちゃんのその声は、微かに震えていた。

< 306 / 467 >

この作品をシェア

pagetop