俺様紳士の恋愛レッスン
フラれてしまった以上、あの頃のような無鉄砲さを取り戻すことはできない。

けれどウジウジしていたって来(きた)る現実は変わらないのだからと、強く言い聞かせる。



「仕事は仕事。今はビジネスの時間!」



リップを握り締め、緊張から微かに震える唇に、気合いの赤色を乗せていく。

縁まで綺麗に描き終えて、最後にきゅっと唇を結んだ。



「――うしッ!」



リップをポーチに押し込んで、気合い十分にトイレを出た。

腕を振り、高らかにヒールを鳴らしてオフィスへ向かう。



「よしッ、待ってろ十夜!」

「私が何か」

「ッ!?」



突如横から現れた声。



「おはようございます、篠宮さん」



銀色の箱から降り立った彼は、緩やかな笑みを私に向けた。

< 317 / 467 >

この作品をシェア

pagetop