俺様紳士の恋愛レッスン
「……そうだな」



小さく呟いた十夜は、私の隣に立つ。



「言われなくても、もう何も言わねぇよ」



流すような視線を落とし、銀色の空間を颯爽と去っていく。

その瞳には相変わらず感情らしい感情は映っていなかったけれど、確かに感じた。



「十夜ッ!」



怒りの中に、僅かな悲しみの色。



「私タカちゃんと別れた! そんだけ!」



去り行く背中に、香りに、精一杯に強気な声を投げ掛ける。



「さよなら!」



銀色の扉が視界を横切る。

消えていく背中が、振り返ろうとしていたように見えたのは、きっと私の願望が見せた幻影だ。

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