俺様紳士の恋愛レッスン
ただでさえ蒸し暑い梅雨の夜に、極度の緊張が折り重なって、額にはじわりと汗が浮かぶ。

口から心臓が飛び出そうとは、まさにこのことだろう。



「本当に会ってくれなかったらどうしよ……はは」



独り言も、震える。

冷静でいるつもりでも、頭の中は酷く混乱していた。

何を言えばいいのかもさっぱり分からないけれど、とにかく会わなければ始まらない。



そして辿り着いた2階奥の角部屋、ドアの前。

ハンカチで汗を抑え、乱れた髪を手ぐしで整え、無駄に何度も深呼吸する。



「はぁー、ふぅー……よしッ!」



最後に活を入れ、意を決し、震える指でインターホンを押した。

緊張感とは不釣り合いなベル音が鳴り響き、暫しの間の後。



『――何でお前がいるんだよ』



至極不機嫌な声色が、耳を伝った。

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