俺様紳士の恋愛レッスン
落とされた微笑からは、意図は疎(おろ)か、感情の欠片すら拾えない。



「残念ながら、俺は篠宮サンの理想とはかけ離れた人間だったってこと。分かった?」



顎から指が離されると、閉ざされた空間は解放され、闇から暗がりへと景色が変わる。



「っつーわけで、ビジネス用の俺とだけ仲良くして」



不敵な笑みを残して、私に背を向けたチャコールグレー。

1歩、1歩と遠ざかる影を見つめて、ゆっくりと回復していく意識。



――なるほど。
私が堕ちた片柳さんは、どうやら本当に二次元の人だったらしい。

そりゃそうか。
冷静に考えたら、あんなにも完璧な人間がこの世に存在するはずがない。



そう言い聞かせるのに、消えていく香りにまたも名残惜しさを感じている自分がいる。

気が付けば、私の本能は彼の背中を追っていた。



「待って……!」

< 49 / 467 >

この作品をシェア

pagetop