俺様紳士の恋愛レッスン
「……いいの?」

「あー。片柳って呼びづらいだろ。実際この前噛みかけてたしな」

「へっ? なんのこと……」



と、巡らせるまでもなく、すぐに辿り着いた近しい記憶。

それは先週の水曜日。私が並木道のド真ん中で、片柳さんを呼び止めた時のこと。



「あっ、あれは!」

「まさか追いかけてくるとはな。しかも俺の名刺を握り潰しながら」



再び現れた意地悪の色に、ドクンと大きく心臓が跳ねた。



「あんな屈辱を味わったのは初めてだ」

「ちょ、あれはっ……!」

「帰ろうとしても呼び止められるしな」

「ち、違うの……!」

「しかも仕事には一切かんけーねーこと聞かれるし」

「だからっ、違くて……!」



捲し立てるような言葉に、遂にはじわりと涙が浮かぶ。

けれど彼は笑みを崩すどころか、いかにも愉しそうな表情で私を見下していて、流石にムカッときた私は睨みつけるように目を細めた。

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