好きだからキスして何が悪い?
デスクとロッカーが面積の半分を占めている狭い事務所に入ると、皆とおそろいのエプロンを手渡された。
それを付ける前に、店長さんに断りを入れて家に電話を掛けることに。
出たのは妹の美紅で、急きょお手伝いのバイトをすることになったから、帰るのは夕方になると伝えると。
『お姉ちゃんがバイトぉ? ふーん、頑張って。
でも接客業だけはやめた方がいいよ! そんな原始人みたいな外見で人様の前に出たら、お店の評判ガタ落ち──』
「サヨウナラ」
失礼にも程がある発言を途中でぶった切り、スマホをバッグの奥にしまった。
地味な私でも出来るわよ。
美紅のことも見返してやるつもりでやってやる!
……そう意気込んで始めたものの、本屋の仕事というのは意外にもハードだった。
新刊を取り出して機械でビニールを掛け、それを売り場に並べる。
このしゃがんだり重い箱を持ったりという作業が腰に来るのだ。
もちろんお客さんが来たらレジをやって、本の場所を聞かれたらきちんと答えなければいけない。
私はほぼ雑用だったけれど、それでも午前中はとにかく忙しく、如月くんと仕事以外の話をする余裕はなかった。