君までの距離
アタシのアパートで遥香に向かい合って話を切り出した時、彼女は眉間にしわを寄せた。
「アタシ、脚本を書こうと思うんだ」
「……未也が……そんなことを考えていたなんてね……」
「才能なんてないかもしれない。でもやらなかったら、ダメなの。少しでも高遠さんに近づきたいし、高遠さんを知りたいの」
ふっと遥香の唇が笑いを刻む。
「……止めないわ……寂しいけれど……どこにいても未也が笑っているなら……そのほうがいいに決まっているわ……」
遥香の前に、パソコンからプリントアウトしておいた一枚の紙を滑らせる。
「この脚本賞に応募しようと思うの」
紙を手にした遥香は目で文字を追っている。一度下まで動いた視線は、また上に戻りじっくり吟味している。
「そこまで……考えていたなら相談ではないのね……」
「うん。決意表明、みたいな。遥香にはアタシが何をしようとしているのか、知っていてもらいたかったの」
恥ずかしいのをごまかすために、頭をかく。
「今回ダメでもいいの。初めてだし、きっとアタシなんかより上手い人は沢山いるはずだし。アタシは今書ける一番いいもので応募する」