恋人境界線
あの態度はなに?
あたしをからかっているのだろうか。
彼女がありながらの、気まぐれなキス。春臣は友達以上のなんとも思っていなくたって、あたしは――
水辺ではしゃぐみんなを上目遣いで見ながら、膝を抱えた。
春臣が持ってきたペットボトルが、汗をかいてしまっている。
『期待してたのに。志麻の、水着。』
言ったときの、鋭いほどの真剣な目付き。
背徳も罪悪感も忘れて、吸い込まれてしまいそうな焦燥。
耐えられない。
もう春臣の近くにはいられない。こんなことになるなら、もっと早くに告白して振られた方がよかった。
「そろそろ帰ろうって!……志麻?」
「あ、ああ、うん…」
灼熱の太陽を遮ってくれたパラソルをしまって、すっかり健康的に日焼けした友達とペンションに戻る。
気付かないうちに、目であいつを追ってしまう自分とはもう、さよなら。
こんな不毛な恋に、さよならだ。
歩きながら振り向くと、ぷっくりと茜色に膨れた太陽が、やや黒みを帯びた水平線にゆっくりと、吸い込まれていった。