恋人境界線
貪るように、口付けを交わして、ノートは貸さずに帰宅した。
あたしは実家住まいだから、もしかしたら一人暮らしの春臣の部屋に誘われるかな、って思ったけど。
淡い期待は、打ち砕かれた。
身も心も。境界線なんて、目に映らない透明なものになってほしかったけど。
そんなこと、女の子の口からはとてもじゃないけど言えなかった。
休み明け。
あたしは春臣に貰った香水をつけて、大学に行った。外見や話し方は変わらないにせよ、纏う香りが違うだけで、新しい自分になれた気がする。
春臣を好きと、胸を張って言える。そんな自信が、あたしを変える。
「志麻ー、ちょっとこれ見てよ」
同じ学部でサークルも一緒の静佳に見せられたのは、案内用のポスターだった。
秋の、学園祭シーズン。
うちの大学も例外ではなく、今週末に、学園祭が催される。
「これは酷いね」
一枚のポスターは、日本語で書かれていることすら疑ってしまいそうな程、無残な出来だった。字が汚い。
それに、白い画用紙に、すべて黄色のマジックで手書き、ってのもセンスを疑う。