恋人境界線
向こうは三人、あたしはひとり。
友達と笑い合いながら、こちら側に向かって来る薫。
食い入るように見つめるあたしの視線に気付いたのか、一瞬だけ目が合った。
…話そう。
このままお互い、避けていては駄目だ。腹を割って、話そう。あたしの気持ちをわかってはくれなくても、例え憎まれたとしても伝えたい。春臣が好きだと、ずっと言えなかったこと。
あと数歩で、すれ違う。
もう一度薫が、睨み見るような目をこちらに寄越した。尻込みしそうになる自分に、しっかりしろと言い聞かせる。
「かっ、薫……」
足を止めたのは、あたしだけだった。呼び掛けた声は、相手に届く距離だったのに。
まるであたしという人間など、存在していないとでも言うように、軽やかにあたしたちの影は交差した。
すれ違った直後。
薫の代わりに風が、あたしを追ってきた。
それは、無色透明ではない、風。
「――っ」
色にしたら、真っ白。あたしの頭を空っぽにさせる白。
甘いお花みたいだけど、どこかスパイシーで洗練された香水の香りを、鼻で感じたから。