恋人境界線
春臣は薫に別れを告げた。あたしはそう、聞いている。本人から。
けれども。それには、あたしの存在が絡んでると。はっきりと言葉に出して、聞いたわけじゃなかった。「…っ」
なのに、どうしてそう思ったのか。
夏休み明けから薫に避けられて、それが不自然だったから。あたしが勝手に解釈した。
「志麻たち、仲良いじゃない?心当たりあるかな、って」
頭上にあるこぶしの木の葉っぱが、大風に揺られざわざわと騒がしい。
「高校のときから友達だったんだもんね。男女間の友情もちゃんと成立するんだね」
「…っ」
並んで座るあたしたち二人。ひとつ前の季節までは、講義もこうして隣の席に座って受け、帰りにはよく遊んでた友達。
それが、今や、お揃いの香水なんかつけてることに、ひどく違和感がある。
「……薫っ!あたしね、」
「海に行ったときは、あんなに優しかったのに」
意図的にあたしの言葉を遮った薫は、次第に吹き荒れる強さを増した風に負けないくらい大きな声で、続けた。「あの夜あたし、初めて抱かれたんだよね」