恋人境界線
つい今し方、薫が譲った、その場所に。
「面倒なこと頼んでごめんな」
「いいのよ」
「サークルの奴ら、誰も手伝ってくれねーの」
「、ははっ」
乾いた笑い声が出た。
「薄情だよなー」と、真上に腕を伸ばした真島くんを、不意に見つめたとき。
動悸が、激しくなった。
正確に言えば、真島くんを見つめたんじゃない。真島くんを過ぎ、遠く後ろにいる、春臣を見つけてしまった。
「学祭用に冊子作るのだって立派なサークル活動だっつうのに」
「そっ、そうだよね…」
春臣も、こちらを見ている。突き刺すような目線が痛い。
反らすなんて許されないと言われてるように、錯覚する。
『そんな男ら、ひとまとめにして消し去りてぇんだよ』
春臣の言葉が蘇る。
動かそうとしないあたしの顔の向きが気になったのか、真島くんが背後を振り向いて見た。
「…お前らさ、どうなってんの?」
居心地の悪い沈黙が短い時間続く。
本館の入り口付近に立つ春臣が、こちらに向かって歩いて来るのが、視界の端に映る。
「あんま首突っ込まないようにしようとは思ってたんだけど」