恋人境界線
本館と、パソコン室がある別棟とを繋ぐ道は、他にもある。
立ち入り禁止の、整備された芝生の部分を避けるように、歩道が作られている。
「下世話なこと聞いて悪いけど、俺も割りと不毛な恋に精一杯、っつうか」
真島くんは、薫が好きだ。だけど薫は、春臣が好き。
――ねえ、春臣は?
誰を想って、誰に焦がれるの?あたしは何を、信じたらいい?
春臣は、誰の名前を囁くの?
「志麻と春臣って、付き合ってるわけじゃねーんだろ?」
あたしは口を閉ざしたまま、春臣の姿を目で追った。
しっかりとした足取りで、パソコン室の方向に向かう春臣は、道の分岐点に差し掛かる。
あたしが今座っているベンチが設置された道に爪先は向かうだろうと、信じて、疑わなかったのに。
「……っ…」
春臣は、通り過ぎた。
あたしたちを避けるように、一番遠回りになる道を選び、歩いている。
道すがら、こちらを気にする様子もない。
「真島くん、春臣を、殴ったんだってね」
「ああ。春臣の薫に対する扱い見てたら、思わず手が出ちまって」