恋人境界線

傘をさしてまともに歩けないんじゃないか、と容易く予想はついたけど、あたしは大学へと向かった。
案の定、外に出てすぐに風を受け、翻りそうになる傘の柄をしっかりと両手で持って歩いた。

この町を通過するのは、夕方あたりになるらしい。
ニュースを見たお母さんが、あたしを送り出すときに心配そうに言っていた。


大学は休講になった講義がほとんどで、閑散としている。
パソコン室は運良く解放されていて、ぽつぽつと席が埋まっている。あたしは昨日と同じ、一番前の席につくと、一人で作業を始めた。

真島くんから借りたデジカメをパソコンに繋ぎ、取り込んだ写真をレイアウトして適当な言葉を並べていく。
それらしく作れば、誰も文句など言わないだろう。


「あ…懐かしい」


去年の春に大学近くの神社で催した、お花見。
ビールが足りなくなって、わざわざ近所の酒屋に買い足しに行ったっけ。
真島くんや薫は酔ってしまって、足取りも覚束なくて。あたしと春臣、二人で行ったんだ。

マウスをクリックする速度が鈍くなる。
< 50 / 96 >

この作品をシェア

pagetop