恋人境界線

大学側からの依頼で、真島くんや静佳がさじを投げ、あたしに回ってきた仕事。だけど、いつしかあたし自身の思い出を整理しているような気分になった。

一枚一枚、画面に映し出される写真を、じっくりと吟味するように眺める。

写真の中にいる昔のあたしはどれも、春臣と距離を置いた場所を選んで映っていた。
カメラに向ける偽りの笑顔が、自分で見ていて痛々しい。

お花見も、紅葉を見にドライブしたときも、スノボ旅行も。
そして、夏の海水浴でも。


『あの夜あたし、初めて抱かれたんだよね』


…早く作業しなくちゃ。
腕時計を確認したら、短針は既に6時を指している。素早くキーボードを叩いていると、パソコン室のドアが開いた。


「あら?まだ居たの?」


ひょっこりと顔を覗かせたのは、講師の多野木。
視線は一点に、あたしだけを捕らえていたから不思議に思って後ろを見たら、驚いたことに室内にはあたししか居なかった。


「君も、早く帰った方がいいよ。外、荒れてるから」
「あ、はい…」


どれほど、過ぎ去った思い出に浸っていたのだろう。
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