恋人境界線
突然唇が動いて、あたしの体は飛び跳ねた。
「シャワー浴びた後の肌の匂いも、そそられる。」
開いた瞳は、至近距離であたしを見つめる。
「お、起きてたの!?」
「眠れるわけねーだろ」
上半身を起こした春臣は、煩わしそうに乾ききらない髪を掻き分けた。
「お前が、同じ部屋にいて」
「…っ…」
その言葉の意味を問うのは、無意味だった。「…寝たふりするなんて。ず、ずるい」
やっとのことで、あたしはそう言った。
春臣が手を伸ばす。早く逃れなければ。心では、そうと、わかっているのに動けない。
「先に我慢できなくなったのは、そっちだろ?」
言いながら、あたしの手を取って、ふっと笑う。
たった今、春臣の頬を撫でたあたしの指先を、自分の指で優しく擦る。
動けないんだ。
「やっぱでかかったな」
「、へ?」
「そのスエット。」
「あ、ああ…貸してくれてありが」
「可愛い。志麻」
真顔でまっすぐ目を見て言われたら、どう対処していいのかわからなくて。
「そ、そう言われると、すっごく脱ぎたくなるんですけど」