恋人境界線
可愛くないことも、言いたくなる。
「天邪鬼。服乾くまで着てなって」
「……、」
「まぁ俺はいつも、頭ん中で脱がせてるけど」
「…っ変態!」
拳を握って肩を叩こうとしたら、タッチの差で掴まれた。
二人の動きが止まって、聞こえるのは風雨の音だけ。
沈黙に包まれる間中、見下ろすような春臣の眼差しが、どこか、妖艶にも見えた。
「志麻、こっちきて」
「…っえ、え?」
戸惑う間に、あたしの後頭部を手のひらで支えた春臣は、そのままあたしをベッド側に引き寄せる。
腕一本で軽々と、あたしを仰向けに寝かせた。
「俺とこうなるのは、嫌?」
あたしの体を跨いでベッドに膝を付いた春臣と、顔の距離が縮まる。
何が起きているのか。
しっかり見て、考えて、判断しようと思っても。あたしの視界を満たすのは、上半身を晒した恋しい男。
「答えないのは、続けてもいいってこと?」
唇が重なる。
舌先が割り込んできて、息苦しい。
「いっ、言えな……っ」
ずるい男。
聞いておきながら唇を塞がれたら、答えようがないじゃない。