恋人境界線

手酷くて、ハマると厄介で。それでいて、恋しい男。

息苦しさは、次第に心地良さに変わる。そんなキスはこの恋の形に、よく似ていて。


「俺は、できればやめたくない」


手のひらで頬を包み込み、緊迫した目線で、迫られたら。
頷く以外の手段がなくなるじゃない。

口付けをしながら、春臣の手がするりとスエットの中に潜り込む。
余裕がある分、いとも簡単に敏感な部分に達する。


「…っい、痛…」
「志麻、もしかして」
「……っ、」


あたしは初めてだ。
男の人を受け入れるのが。ずっと、気の合う男友達に片想いしていたから。

あたしの友達ばかりと付き合っては、別れ。
まるで四季の移り変わりのように、自然に繰り返してゆく歯痒く苦しい情景を。あたしは横目で見ては、自分の気持ちに蓋をしていた。

その人が、今。あたしの中に指を入れている。


「噛んでていいから」


もう片方の指を、あたしの唇に割り込ませる。「加減してやれなくて、ごめん」力なくそう言った春臣は、今にも泣き出しそうな表情をしていた。
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