恋人境界線
ひとりぼっちになったあたしは、窓辺に頬杖を付いた。
「部屋割り、か…」
そうだよね。男女仲良く二つに分かれるわけがないよね。
サークルの中には他にもカップルがいるし、せっかくの旅行だもん。恋人の時間も作ってあげなきゃ。
『…いや。志麻のノートは生まれたときからずっと俺だけのもんだから』
深読みしたらダメだ。
あたしたちの関係は、変わらない。
「…っ」
だけど、ね。
まるで、なにもないみたいじゃない。平行線も、水平線も、境界線も。
なにもなく、あたしたちがひとつの単体であるかのよう。遥か昔から。
“志麻は”
言い直したことにも、あたしは気付いてしまった。
あたしたちは、友達。
それ以上でも、以下でもない。
それを決めたのは、あたし?それとも、春臣?
「なんだかんだ言って、あいつらうまくいってるみたいだな」
「――!」
「ごめん、びびらせた?」
両肩が張るほど、びっくりした。
お陰で目尻に溜まった涙が弾けた。
「あいつら、って…」
振り向くと、真島くんは空っぽになった春臣の席に目をやった。