坂道では自転車を降りて
「今朝は、ギリギリで慌ててたから、乗る場所、間違えちゃって。」
「。。。。あんなの、許せないよ。」
「でも実際あるんだから、しょうがないじゃん。思い出したくないから、もう止めようよ。」
彼女はやれやれといった表情でおどけてみせたが、すぐに俯き、ため息をもらしながら、手元の作業に戻った。そう言われては、もう何も言えない。唇を噛んでいると。彼女は顔を上げ、俺を見て優しく笑って言った。
「そんな、泣きそうな顔しないでよ。私はもう大丈夫だから。」
俺は泣きそうな顔をしているのか。
「ごめん。本当に。」
「謝らないでよ。君は関係ないんだから。ドアの近くに乗った私がいけないんだ。神井くんは優しいんだね。嫌な気持ちにさせてごめんね。」
君が謝るなんて、絶対におかしい。
「大丈夫だって。あれくらいでいちいち落ち込んでられないよ。」
笑った顔は、どこか無理しているのが分かる。何か俺にできることはないのか。考えて、、、何もないと悟る。

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