坂道では自転車を降りて
 サビのYouのところで、一瞬、見つめ合う動作が印象的な一曲なのだが、川村と彼女ははずかしげもなく見つめ合った。こいつら恥ずかしくないのか?
 いや違う。俺は普段の役者連中となら、こんな歌でも平気で歌ってる筈だ。男同士だったら、抱き合ったりキスしたりだって、平気でやるし、女子とだって、その場のノリで見つめ合うくらいなら、なんでもない。なんで今日だけ、こんなに恥ずかしいんだ?こいつらが役者じゃないからか?

曲はまだつづく。どうしようかと思っていると、
「歌詞、覚えてないのか?」
「いや、でも」
お前は恥ずかしくないのか?
「だったら、歌えよ。俺も歌うから。」
「大野さん、アニタ」
曲が6拍子に変わる。後半の5重唱のほうだ。
「Anita's gonna get her kicks Tonight We'll have our private little mix Tonight. He'll walk in hot and tired, So what? Don't matter if he's tired,As long as he's hot Tonight!」

 大野さんは歌詞の内容がわかって歌ってるんだろうか??今夜、彼と密会して×××してって内容だぞ?それに、この後は、男性のパートのはず、俺が歌うのか?もうヤケクソだ。
「Tonight,Tonight…..」

ふと曲が変わる。
「神井、BEAT IT だ。」
なにっ?彼女はもう手を打ち始めている。
「They told him don't you ever come around here Don't wanna see your face you better disappear The fire's in their eyes and there wards are really clear So bear it , Just beat it」
「Whoo!」
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