坂道では自転車を降りて
それからしばらくの間、胸に抱いた彼女の髪をなでながら、窓の外を眺めていた。いい天気だ。こんな可愛い子が、俺の腕の中にいる。夢を見てるみたいだった。
「神井くん。。」
「落ち着いた?」
「。。。。」
まだなんとなく不機嫌な感じがする。
「ねぇ、機嫌直してよ。」
「べつに、機嫌が悪いわけじゃ。。」
「ごめん。ねぇ、やっぱり本当は嫌だった?」
「わからない。びっくりしただけのような気もする。」
確かに俺もびっくりした。あんなに反応するなんて。。初めて見る彼女にただ驚いた。
「可愛かったよ。すごく。」
みるみる顔が紅くなる。
「うるさいっ」
拳を振り上げる。
「うわっ、またっ。。なんで怒るんだよっ」
「うるさいっ。怒ってないもんっ。ばかぁっ。もう知らないっ。」
知らないといいながら、彼女は再び俺に身を預け、離れようとはしなかった。子猫のように頬をすり寄せてくる。
「なんか、、かわいいなぁ。。本当に。食べちゃいたいくらい。。。ずっとこうしていたいなぁ。。」
うわ、俺、調子にのりすぎだろ。。恥ずかしい台詞をぬけぬけと口にする自分にもびっくりだ。
「。。。。。。。」
「ねぇ。。多恵の顔、もっと。。。あ、れ!?」