坂道では自転車を降りて
固まる俺。彼女はゆっくりと俺に頭を寄せた。自分ではとりづらそうだったので、俺はボタンに絡まった髪をほどいてやった。細くて癖のある髪は、糸くずみたいに絡まるようだ。そっとボタンから外したけど、髪は絡まったままだった。彼女はいたずらが失敗した子供みたいにペロリと舌をだした。
「ありがとう。」

「髪、なんか、いつもと違う匂いがした。」
今日の彼女の髪は春の花みたいな、香料の匂いがした。
「ん?あぁ、日曜に美容院に行ってみたの。」
「そうなんだ。」
やばい、気付かなかった。
「今までは自分で切ってたんだけど、行ってみようかなって。」
「へっ?」
高校2年まで美容院に行った事がなかったのか。それもどうかと思う。

「美容師さんが切ると、頭軽いし、勝手に纏まるし、プロは違うね。」
「美容院、初めて行ったの?」
「うん。すごい時間がかかってびっくり。それにすごく高い。」
高いかな。まあ、結構な出費ではあるな。女性はもっと高いのかもしれない。
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