坂道では自転車を降りて
「ええっ。」
今度は彼女がびっくりしている。頼むからこれ以上話をややこしくするな。微妙な空気が全員を包む。なんとかしたいけど、ここで発言したくない。無関心を装い、あきれ顔でため息をついた。さっさと稽古に戻ろうぜ。みたいに見えてるかな。。
「まあ、いいや。これは二人で自主練しておいてもらって、主役と友人、芝居を続けて。」
結局、演出が場を切り替えてくれた。

 彼女はその後も舞台の袖で山田と自主練させられていた。演技ができなきゃ自主練をさせられるのは当たり前の事なのだが、舞台の袖の暗がりで山田と彼女が抱き合ってる姿がチラチラ見えて、俺は自分の演技どころではない。今日はさんざんダメだしされてしまった。本番までになんとかなるのか、これ。

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