坂道では自転車を降りて
「なんで、逃げないの?」
彼が訊ねた。
「。。。川村くんが、心配だから。」
「このまま、襲われてもいいの?」
かまわない。私は思っていた。

「。。。川村くんはそんなことしないよ。」
「お前、、本当にずるいな。」
「。。。。。。」
「先輩にも言われたろ。神井は言わなかったか。他の男に触るなって。」

「自分のせいだからなっ。」
「わかってる。」
「いいのかよ。ここで俺にめちゃくちゃにされても。」
そんなの良いわけない。でも、どうしたら良いかわからない。

「行けよ。神井のところへ。」
「。。。。でも。」
こんな川村くんほっとけないよ。
「行けっ。今度こそ本当に犯すぞ。」
大きな声で怒鳴られ、恐怖で縮み上がる。

「頼むから。。。。今すぐ、俺の前から消えてくれ。」

 ようやく私は理解した。私にはどうすることも出来ないのだ。私の存在が、彼を傷つけたのだから。
 どうしてこんなことになってしまったのか。悲しくて、ただ悲しくて、泣きながらよろよろと教室のドアを出た。

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