坂道では自転車を降りて
演劇部辞める。もう無理。
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俺が舞台での稽古を終えて、部室に戻ると、裏方の一年達が途方にくれていた。川村と大野さんが行方不明だという。
「最初に川村さんがいなくなって、皆で探してたら、今度は大野先輩も戻ってこないんです。」
「電話してみた?」
「大野先輩の電話は、そこの鞄の中で鳴ってました。川村先輩のも出ないんです。」
胸騒ぎがした。最近、川村の様子がおかしいことは、彼女から聞いていた。彼女が川村を見つけて、二人きりになったら、、何が起こっても不思議はなかった。

「どこを探した?彼女はどこを探しに行った?」
 音楽室と放送室は見たという。教室を端から探す。階段の途中で、大野さんに出くわした。

「神井くんっ」
「大野さん、川村はいたのか?」
「お願い、助けて。」
 涙で濡れた頬、乱れたネクタイを胸元で押さえる彼女を見て、頭に血が上る。俺は後輩と一緒なのも忘れて、彼女を抱きしめていた。

「何かされたのか?」
「違うの、私は大丈夫。川村くんを助けて。お願い。」

またぽろぽろと涙を流す。何があったのか、だいたいの察しがついた。
「わかった。わかったから。落ち着いて。」
「川村くんが、壊れちゃうっ。。」

「君は、大丈夫なんだな?」
彼女は泣きながらこくこくとうなづいた。
「川村のところへは俺が行く。大野さんは先に部室へ戻っていて。あいつどこにいるの?」
「階段教室。」
「?、それどこ?」
「図書室の奥。」
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