坂道では自転車を降りて
肩を揺すったり、耳を引っ張ったりしたが、本当に動かない。こんなに起きないなんて、逆に狸寝入りを疑ってしまう。
「神井くんのバーカ。」
耳元でささやいて、耳たぶをかじってみる。無反応だ。本当に寝ているらしい。

 とりあえず、彼のコートを探して、肩にかける。底冷えのする冬の倉庫だ。これだけじゃ到底足りない。私は衣装ケースから備品の衣装を出して、掛けられるだけ掛けた。何もないよりはマシだろう。

 さて、相手が寝ていては、これ以上することがない。かといって、体育館へ戻っている間に逃げられても困る。しばらく寝ている彼の頭を眺めていた。ちょっと触ってみてもいいだろうか?起こしたいのだから、触っていけないこともあるまい。頭をくしゃくしゃとなでてみる。温かい。首筋にキスしてみる。神井くんの匂いがした。後ろから抱きついてみる。大きい。いろいろしてみるが、あまりに反応がないので、なんだか空しくなって来た。

「ふぅ。。」
 ため息が出た。私、何してるんだろう。彼が目を覚ましたら、私はどうしたらいいんだろう。元気だしてって、私が言うのも変だし。私が元気な姿を見せれば、少しは彼も元気になってくれるだろうか。それとも、私を見ると腹が立って仕方がないのかもしれない。
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