坂道では自転車を降りて
「あいうえお かきくけこ さしすせそ たちつてと
 なにぬねの はひふえほ まみむねも やゆよ
 らりるれろ わをん」
彼女が歌い始めた。

「何それ?」
「あれ 知らない?君の使える魔法の歌だよ。」

 マカフシギで アラフシギね 「あ」から「ん」組み合わせ
 口にしたり 文字にしたり 今日は何を話そう

 君と話したいことがある
 それを思うとワクワクするよ
 君と近くに居ても居なくても
 そんな素敵な日々です

 君からもらった言葉の数
 どれも大切な宝物
 誰かを想うっていい感じ
 言葉にするっていい感じ

俺も聞いた事がある。Greeeenの曲だ。彼女が歌うとまた違う可愛らしさがある。
「本当だ。良い歌だ。」
こんな詩が書けたら、カッコいいが、俺はどうだろ。

「初めて聞いた時、君の事を考えたよ。」
「そうだな。言葉って不思議だな。たった50個の音の組み合わせなのに、心が動く言葉が、物語が出来上がる。どうやって出来上がるのか、自分にも分からない。」
「勝手に出てくるって言ってたね。自分でも分からないんだ?」
「最初にあるのは気持ちなんだろうけど、、『言葉にするっていい感じ』か。」
「君の魔法。すごいと思う。私大好き。」
「それは。。。ありがとう。」
「また 書けたら見せてね。」
「そうだな。春のやつ、冬休み中には書いておくつもりなんだけど。。」

 本当は、やりたくて書いていたものがあったのだが、ダメになってしまった。なのにまだ、他のものを書く気がしないでいた。ピアノを弾く川村を舞台にひっぱりだろうと思っていたのだ。それほどにあいつの音はすごかったと思う。しかし、言っても仕方の無い事だ。引き出しから他のものを探すほか無い。
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