坂道では自転車を降りて
俺より多いじゃん
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 その日は一緒に帰る約束をしていた。舞台の練習も裏方の作業も、ようやく順調に走りはじめた。活動にはまだ余裕がある。最近は昇降口で待ち合わせて一緒に帰っていた。坂道で自転車を降りて歩く時が一番楽しい。彼女は俺の知らないいろんな話をしてくれる。草花の話だったり、宇宙の話だったり、自然の話が多い。大抵、なんの脈絡もなく唐突に始まって、なんだか分からないまま終わる。それから最近読んだ本の話、本は科学の本の他はいわゆる名作かSFやファンタジーが多くて、文学作品とか歴史小説にはあまり興味がなさそうだった。

 俺もいろんな話をする。友達の話、読んだ本の話。歴史小説、文学や哲学の本。いろいろ。彼女はいつも俺の話を真剣に聞いていて、時々、質問したり、反論してきたりする。食い違ったままになる日もたまにある。納得がいかないと絶対に頷かないし、時には詭弁と思われるくらいの論法でムキになって反論する。分かってたけど、あまりに頑固なので、時々ケンカみたいになってくる。弁論に関しては俺だって負けてないからだ。最後は我慢競べみたいになって、結局、俺が黙る。いつもそのパターン。

 それでも、坂が終わって自転車に乗ると、彼女は必ず俺の背中に頭をつける。もっと一緒にいたいって、言われてるみたいで、切なくて嬉しい。今日は、公園に寄ってもう少しだけゆっくりしようか。飯田に教えてもらった公園がいいかな。そんな事を考えながら一日過ごす。

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