坂道では自転車を降りて

「別に悪い人じゃないと思いますよ。何に対しても真剣ですし、尊敬できます。大野先輩が心配するような事は何もないですよ。あーゆー人だから、合う合わないはあると思いますが。」
「そう。。」
 当たり障りのない答えに、納得がいったのかどうかは分からないが、とりあえず先輩は黙った。

 そう、悪い人ではない。彼女の事も真剣ではあるらしい。でなければ、後輩にあそこまで言われて、頭を下げたりはできない。真剣で謙虚な態度に俺は少しだけ彼を見直した。その後も何度か様子を訊かれた。あれもこれも抱えながら、彼なりに彼女とこの部を大事に思っていることは分かる。ただ、なんとなく気に食わない。何故なのか。だが、このままにしておくのも彼女が可哀想な気がした。
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