坂道では自転車を降りて
「変だな。部室って言ったけど。あ、美術部のほうか。」
でも美術部に部室ってあったかな。
「美術部に部室なんてありましたっけ?」
椎名が言う。関係ないのに詳しいな。
「そうだよな。美術部には部室はないな。美術室だな。聞き間違えたのかな。なんか最近しつこく多恵を尋ねてくるヤツがいるらしくて。知らないか?」
「椎名じゃねぇの?」
「俺じゃねぇよ。先輩とは引退してからは、2、いや3回しか会ってない。」
「3回ね。」
その3回をちゃんと数えてるところが、潔いんだか、潔くないんだか。だが、椎名ではないらしい。
「俺は、あの後、何度か会いましたけど、3年の教室になんか行ってませんよ。」
織田も首を振った。
「まあいいや。今日も別に約束してた訳じゃないからな。また明日にでも本人に聞いてみるよ。美術部の後輩だったら、俺にはどうしようもないしな。」
電話をすることもできるが、用があって呼び出されたんだろうし。邪魔するほどの事じゃない。今日は諦めて帰ろう。