坂道では自転車を降りて
「多恵?まだ学校にいるの?」
恥ずかしいくらい甘ったれた声がでてしまった。
『織田です。』
一瞬、訳がわからなかった。掛け間違えたか?表示を確認する。多恵の電話にかかってる筈だ。
「なんで織田?」
今の声、聞かれた。すげー恥ずかしい。
『大野先輩、気分が悪くなって、今、保健室にいるんです。』
保健室??なんで織田が電話に出たんだ。彼女はそんなに悪いのか?それに、織田とはさっき会った。俺が彼女を捜していた事を知っている筈だ。織田はいつから彼女と一緒にいるんだ?疑問ばかりが浮かぶが、今はとりあえず、保健室へ行くしかない。
「。。。。分かった。すぐ行く。」
『え、本当に来るんですか?』
どういう意味だ?
「なんで?保健室にいるんだろ?」
『神井先輩、帰ったんじゃなかったんですか?』
ああ、そういうことか。
「今、昇降口だ。すぐ行く。」
俺はもう一度上履きに履き替えて、保健室へ向かった。
保健室には彼女と織田がいて、養護教員はいなかった。2人だけってどういうことだよ。彼女はかなりダルそうだったけど、いつもの作り笑顔が張り付いていた。最近、俺もようやくこの笑顔が少しは分かるようになってきた。何か俺に隠してる時の顔だ。それに、この程度なら電話に出られた筈だ。何か変だ。だが、それ以前に織田がどうしようもなく変だった。やたら落ち着きがなくて、多恵をチラチラ見る。俺と視線が合わない。何かあったのは明らかだ。