坂道では自転車を降りて
突然、ガヤガヤと声がして、他の生徒が保健室に現れた。そうだった。養護教諭もいた筈だ。隣のベッドにももしかしたら人がいたのだろうか。今の会話、聞かれてたのか?急に恥ずかしくなって、俺は彼女を離し椅子に座り直した。彼女も居心地悪そうに俯いた。カーテンの外では、具合の悪くなった生徒とその友人が保健士と話しながら、熱を測ったりしているようだ。
教室に戻ろうと思ったのか、落ち着かない様子で彼女はベッドの反対側から降りようとした。しかし、上履きがこちら側にあると気付き、俺の隣に降りる。ふわりと降りた彼女の気配に、俺はやっぱり我慢できなくなって無言で抱き寄せた。抵抗されるのは覚悟の上だった。抱き締めると彼女は怯えたように震えていたけど、抵抗はしなかった。その小さな顎を掴んで強引に唇を寄せると、むしろ、彼女の方から俺に口づけた。唇を吸い舌を絡ませ、細くしなやかな両手を俺の背中に回した。長い長い口づけの後、唖然としている俺を残して、カーテンの隙間から外へ出た。いつの間に、こんなことができるようになったのか。
教室へ戻る彼女を追いかけながら階段を上がる。
「今日は?一緒に帰れる?」
「ごめん。もう。。」
「ひとりで決めるなよ。」
「。。。。」
「このままじゃ、納得行かない。せめて、昨日のことだけでも。ちゃんと説明してくれないと。」
彼女は黙りこんだ。教室についたからだ。後ろのドアから滑り込む。仕方なく俺も自分のクラスへ戻った。