坂道では自転車を降りて
「君が安心とか言われるのもおかしいよな。勝手に俺の事を考えないでくれる。君が俺を振ったんだ。もう別れたんだ。心配される筋合いなんか全くない。俺がどうなろうと、死のうが生きようが、君はどうでもいい筈だ。」
俺はなおもナイフを振り回して彼女を傷つける。
「。。。。そんな。」
「これ以上君と話してると、イライラしてどうにかなりそうだ。もう帰るよ。君とはここでさよならだ。いいよな?」
「そうだね。振り回してごめんね。今までありがとう。」
最後まで誠実な言葉使いが俺の神経を逆撫でする。こんな時に、どうして笑えるの?本当にそれでいいの?
「本当に、いいんだな?」
これ以上無い程のドスのきいた声が出た。自分の目が吊り上がっているのが分かる。彼女は今にも気を失いそうな表情で、目を閉じて浅い呼吸を繰り返している。こんなに追いつめて俺はどうするつもりなのか。
「うん。」
それでも彼女は言った。
心が軋んでギシギシ音をたてている。壊れてしまいそうだった。俺は、自転車にまたがって、ペダルに足をかけた。でも、どうしても漕ぎ出す事が出来なかった。彼女は前を向いて歩き出した。今にも倒れそうな、よろけるような歩き方、ゆっくりと、しかし休む事なく進んで行ってしまう。
(そんなの無理だよ。どうして。。。)
しばらく行った所で、彼女はゆらりと振り向いた。少しの間、俺を見ると、また前を向いて歩きだした。俺は賭けに負けたのか。。