坂道では自転車を降りて
疲れたのか、いつしか彼女は抵抗をやめていた。荒い息づかいの下で答える。
「もういいの。神井くんは悪くない。何も悪くない。私が上手にできないだけなの。みんなを振り回して。織田くんも沼田くんも優しくしてくれた。でも、優しくされると頼りたくなって辛かった。
皆に心配かけてるのは分かってるの。でも、どうしたらいいのか、分からない。あなたにも、正直に言えなくて、逃げ回って、あなたを混乱させて、心配させて。。。迷惑かけてばかり。でも、私は上手く出来ないの。きっとまた同じようなことするの。どうすれば良かったのか、今でも分からないの。今でも、、、全然分からないの。だから、ごめんなさい。もう私に構わないで。お願い。」
「違う、君は悪くない。君のせいじゃない。」
話し終わると彼女は目を閉じて、崩れるように全身の力を抜いた。急に重たくなって、支えきれない。2人で芝の上に崩れ落ちた。
「危ないよ。」
「お願い。もう私を見ないで。」
虚ろな目で芝に倒れた彼女の顔に俺の影が落ちている。柔らかい頬に触れて、ゆっくりと口づけた。もう嫌がって暴れたりはしないけど、仰向けに倒れたまま、目を閉じて、小さくしゃくり上げながら、ただ泣き続ける。多恵、俺の多恵。どうしたら笑ってくれるの?俺は彼女に覆い被さって唇に頬に額に何度もキスをした。
「多恵。お願いだよ。」
彼女は動かない。しゃくりあげる声もしだいに小さくなって、ただ茫然と横たわっている。俺が何をしても無反応で、抜け殻みたいだった。俺はただ必死に彼女の髪に頬に触れてキスを繰り返した。お願いだから俺を見て。