坂道では自転車を降りて

 確かに、最近の彼女は何をしでかすか分からない危うさがある。ふと、半鐘を鳴らす振り袖姿の八百屋のお七の話を思い出した。お七は16歳くらいだったか。恋する人会いたさに、町に火をつける。
 彼女は他人を傷つけたりはしない。できない。だが、代わりに、自分を傷つけてしまいそうな気がした。

「今は本当に大事な時期なんだ。高校3年の夏にどれだけ勉強したかは人生を大きく左右する。明日から夏休みだ。開放的な気分になりがちだが、お互い節度を持ってだな。。少し冷静にというか。。。とにかく、なるべく大野に負担をかけるな。お前は普通にしてるだけで周りを振り回すから。分かるな。」
「はい。」
俺は大きく頷いた。

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