坂道では自転車を降りて
私、どうしたらいいかわからない。
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 突然、田崎から電話があった。プールに行かないかと言う。今年はクラスも違うし、一緒にプールへ行く程親しくないはずだ。どういう理由か尋ねると、彼女と一緒に来て欲しいと言う。

「主に英語の補講のメンバーが、補講が終わってからも、朝学校で勉強してるんだ。一回くらい遊ぼうかってプールに行く事になったんだけど、大野さんがお前のことを気にしてるのか、なかなか首を縦に振らないんだ。他の女子も熱心に誘ってるんだけど。」
「お前らの受けてた補講って健三先生の理系英語だろ。そこに俺も行くの?」
「別に理系だけって訳でもないよ。良いだろ。みんな知った顔だし。」
「彼女の予定は聞いたの?」
「空いてはいるみたいなんだけど、来ないって。」
「まあ、そうだろうな。」

 彼女は今までもそういったことは大抵不参加だった。それにこの状況で俺に黙って行ったりしたら、完全に破局だ。

「叱られたってしょげてた。」
「なにっ」
 あいつは今度は他の男に、よりによって田崎に、2人の事を話したのか。何を考えてるんだろう。
「もっと優しくしてやれよ。」
「余計なお世話だ。」

 でもそうか。俺が怖いのは、身体に触ったからじゃなくて、夜中に出歩いた事を怒ったからか。そういえば、女の子をあんな風に叱ったのは初めてのような気がする。凄く怖かったのかもしれないな。

「かなりまいってたぞ。目ウルウルさせちゃって、普段とあまりに違うから、みんなビックリしてた。彼女も普通に女の子なんだな。」
 彼女のあの顔を、田崎が見たのか。彼女は見せたのか。嫉妬と怒りで、頭に血が上っていくのが分かる。

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