坂道では自転車を降りて

 全身がブルブル震えていた。初めてで戸惑っているんだと思っていた。そんな彼女も可愛いなとか、呑気なことを思っていた。彼女は戦っていたんだ。記憶の中の気絶しそうな程の不快感と。
「でも、多分、もう大丈夫。」
「そっか。」
 俺の腕にしがみつく。彼女は彼女で毎日を頑張って生きているんだと実感する。すべてから俺が守ることなどできないし、彼女自身それを望んでもいないだろう。でも、出来るなら辛い目に遭わずにいて欲しい。2人で励ましあいながら、前に前に進みたい。

「神井くん、可愛かった。」
「はぁ??」
「感じてる神井くん。可愛かった。」
 俺が可愛い?嬉しいような、残念なような、なんだかくすぐったい感覚。でも、彼女が嫌がっていないようなので、安心した。乗り越えられたんだろうか。また無理をさせてないか、不安になる。
「神井くん、気持ちよかった?満足した?」
「そりゃあ、満足したさ。」
「うふふ。よかった。」
彼女は本当に嬉しそうに笑った。

< 770 / 874 >

この作品をシェア

pagetop