坂道では自転車を降りて
建物の東側からは、ところどころ灯りの灯る教室の窓が並んでいるのが見える。文化祭を終えて、片付けの終わった教室だ。
「図書室、灯り消えてるね。」
「だな。」
「1年3組、2年6組、3年4組。」
多恵は自分の学んだクラスの窓をたどる。
「一度も一緒になれなかったな。」
「そうだね。授業中の神井くんも見てみたかったな。」
「つまらなそうに授業聞いてるだけだよ。寝てたりもするし。」
「1、2年の頃に神井くんと同じクラスだったら、私ももう少しクラスに馴染んでたかなぁ。」
やっぱり1、2年のころはクラスに馴染めてなかったのか。演劇部でも裏方組以外の生徒とはあまり馴染んでいなかった。彼女自身が人を遠ざける雰囲気があって、馴染みたいと思っているようには見えなかった。でも心の中はそうじゃなかったのか。
「でも、科学部や数学部ではずいぶん親しく話してたじゃないか。後輩にまで顔を知られてて、ちょっと驚いたよ。てか、君はなんで演劇部にいたの?」
「なんでだろうね。清水先輩がすごく素敵だったから。あんな人と一緒に何か出来たら、私も少しは変わるかなって。本当は美波さんや横江さんみたいなキラキラした女の子達とも、もっと仲良くなりたいと思ってた。結局、上手く出来なかったけど。」