坂道では自転車を降りて
気持ちイイ事してあげる
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 年明けて2月。陣中見舞いに現れた彼女は、使い捨てカイロと近所の神社のお守りを持ってきた。彼女は俺のプレゼントしたペンケースをお守りに試験に臨み、先週末、誰より早く私立難関校の合格通知を手にしていた。なんとかそれなりの大学に合格したことで、彼女は肩の荷が下りたようで、年末の悲壮な表情が消え、ずいぶんと明るい顔になった。

「天神様でお守り貰ってきたよ。」
「君だって国立も受けるんだろ。そういうのは親にまかせて君は勉強しとけよ。」
「国立は親が煩いから受けてみるだけ。記念受験だよ。」
「こいつめ。一人だけ先に楽になりやがって。俺はこれから試験だってのに。」

 父の仕事が思いのほか順調に決まったため、俺は公立大学の他に私大の受験を許された。映像演劇科のある学部で俺の大本命だ。明日がその私大の受験日だった。4月の俺の成績からは考えられないような学校だが、俺は最後まで諦める気はない。その後も滑り止めというには安心できない公立の試験がいくつも控えていた。しばらくは気の抜けない日が続くだろう。

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